『画面を飛び出して、生き物に向き合う。私が「IT」ではなく「実験医学」に命を賭けたい理由』

バイオ・がん研究

みなさん、こんにちは。64歳のプログラマーです。

前回は、Pythonを使って巨大なゲノムデータ(FASTQ形式)を読み込む実践編をお届けしました。行末のセミコロンをうっかり打ってしまうC言語の癖と戦いながらも、無事にデータが画面に流れたときは鳥肌が立ちました。

しかし、そうやって実際にパソコンの黒い画面(ターミナル)に向き合い、データと格闘すればするほど、私の胸の中である「ひとつの確信」が大きくなっていったのです。

それは、「私は画面の中のデータ(IT)をいじるだけでなく、白衣を着て、自分の手で細胞を扱う『実験系・医学系』の研究がしたいんだ」という強い想いでした。

1. コンピュータは「裏切らない」、でも生命は……

長年、派遣プログラマーとして生きてきて、コンピュータの性質は嫌というほど分かっています。
プログラムは、1文字でもバグがあれば動きませんが、正しく書けば100%その通りに動きます。ロジックがすべてであり、予測不可能なことは基本的には起きません。

でも、生物の世界は違います。
『エッセンシャル細胞生物学』を読めば読むほど、細胞や遺伝子というものは、人間が作ったどんなシステムよりも複雑で、気まぐれで、神秘的です。同じ条件で実験をしても、生き物であるがゆえに、思い通りにいかないことだらけのはずです。

プログラマーとしての私は「思い通りに動かないコード」に日々頭を抱えています。しかし、一人の人間としての私は、その「人間のロジックを遥かに超えた、生きた生命の生々しい反応」に、たまらなく惹かれているのです。

2. 少年時代の「白衣への憧れ」を、ただのデータで終わらせない

最先端のがん研究において、Pythonを使ったゲノムデータ解析(バイオインフォマティクス)が強力な武器であることは間違いありません。

しかし、私の原点は、小学生の頃に夢見た「顕微鏡を覗き、薬を調合し、病気と戦う科学者」の姿でした。
せっかく64歳になって、ハローワークで門前払いを食らいながらも、もう一度大学院の医科学研究室という夢に手を伸ばしたのです。それなら、画面の中の文字データを眺めるだけで満足したくはありません。

  • がん細胞が、実際にどうやって増殖していくのか。
  • そこに新しい物質(薬の候補)を投与したとき、どうやって消滅していくのか。

その瞬間を、自分自身の目で、実験室の顕微鏡を通して確かめたい。ピペットを握り、試験管を振り、生きている細胞そのものと対話したい。それこそが、私が本当にやりたかった「がん研究」なのだと気づきました。

3. 「未経験の壁」は高い、だからこそ面白い

ITの世界から、医学・実験という「ウェット」な世界へ飛び込むのは、ゲノム解析のプログラムを書く何倍もハードルが高い挑戦です。実験器具の扱い方すら知らない私は、研究室に入れば完全に「ゼロからの新入社員」です。

年齢のことを考えれば、「無謀だ」と笑う人もいるかもしれません。
でも、だからこそ面白いのです。40年近く慣れ親しんだコンピュータの世界を飛び出し、全く未知の「生命の実験室」にルーキーとして足を踏み入れる。これほど贅沢でワクワクする人生の後半戦があるでしょうか。

道具を揃え、次の一歩へ

想いが決まったら、行動あるのみです。
最近は、自宅でもできる基礎的な顕微鏡の操作を学べる方法がないか調べたり、社会人から未経験で実験系の研究室を受け入れてくれる医学系大学院の情報を必死に集めています。

次回は、私が実際に見つけた「社会人・シニアでも実験室に入れるかもしれない大学院の制度」について、調べたリアルな現実を共有したいと思います。

画面を飛び出し、本物の生命へ。64歳のデバッガー、いよいよ実験室の扉を叩きに行きます!


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